みらリコ小説 その2

 一応勘違いされそうだから理由は言っておくわ。

 一人でいるといっても、一人暮らししているわけではない。

 ちゃんと家にはみらいもモフルンも住んでいるし、はーちゃんだって帰ってくる。

 たまたま誰もいないだけ。そう、たまたまよ!

 そもそもどうしてこうなったのか。

 

 それは私がナシマホウ界に帰ってきた昨日の出来事。

 カタツムリニアから降り、私は早速みらいに連絡しようと携帯を取り出す。

 ナシマホウ界と魔法界じゃあ電波が届かないことで、ナシマホウ界に着いた瞬間に携帯にはたくさんの通知。そのほとんどみらいからだけどね。

 届かないことを知っているのにみらいは日付を見る限りほとんど毎日メッセージを送信している。

 例えば今日こんなことがあったよとか、今日の夕飯と一緒に画像が送信されていたり。最早私とみらいのトーク画面はなんというか、みらいの日記みたいなモノになっている。

 けど私はナシマホウ界に着いた瞬間にこれを見るのが楽しみの一つでもある。みらいが私がいない間どんな生活をしているのか、離れている間の出来事を知るのが私達の時間を取り戻してくれるようで、それが嬉しい。

 今回帰って来たのも久々だったからか通知の数も多く、一先ずトーク画面を開く。

 実のところこれにも良い点はあるのだ。今まで未読だったものが既読に変わることで、みらいも私が帰ってきたことを知ることが出来るから。まあ、ほとんどそこから私が連絡するのが多いのだけれど、たまたま同じタイミングで画面を開いていたのか、既読に変わった瞬間みらいから電話が来たこともあったわね。

 とりあえず今ナシマホウ界に帰ったことを伝えておこうかしら。今回はいつ帰れるか分からないこともあった分、みらい驚くかしらね。と、内心少し驚かすことにワクワクもしていた私。

 だけど、トーク画面を見るとむしろ私の方が驚かされてしまうことになるのだった。

『今日の晩御飯だよ! やっぱり本場の料理は違うねー』

 そんなメッセージと一緒に送られている画像。今日の晩御飯かしらと思ったけど、本場の料理? と疑問に思い、私はみらいのからのメッセージを漁っていると……

 『リコー! お母さんの知り合いがいるっていうフランスでね、お店のお手伝いすることになったんだ。本当はお母さんが行くことになっていたんだけど、私が語学の勉強しているってことで今回勉強も兼ねて私が行きことになったんだ!』

 フランス……って確かナシマホウ界でも今ここにいる場所は日本で、フランスは遠く離れた場所……よね?

『期間は一週間で、大学もお休みだから丁度いいんじゃないかって』

 そうね、一応みらいの大学も冬休み。私は補修諸々でまだ学校にいたのだけれど、元々この時期は早めに帰る予定だった。それが遅れてしまった。

 だがしかし一週間。そしてこの旨のメッセージが来たのはまだ一週間経っておらず、メッセージを追うと戻る日程も送られていた。

『戻るのは――日の夕方の予定だよ!』

 ナシマホウ界での今日の日付を確認する。みらいが言っている日付は明日。

 これでもう分かったと思う。つまり今日帰っても、そこには誰もいなかった――

 

 ということで、そんな出来事から夜が明け、今に至る。

 既に朝食は食べ終わり、食器は流し。昨日帰宅してから食べた夕食も洗っていないため、既にある程度の食器が流しに積まれている。

 決してめんどくさいという理由では……あるかもしれないけど、私が帰ってから最初の食事の後はいつもみらいだった。魔法界での教師の仕事から帰って、ナシマホウ界での移動時間もあったりと、みらいは頑固でいつもその後はみらいが食器を洗っている姿を後ろから見ているのが半ば習慣だった。

 それはまるで、単身赴任で一時帰宅している夫と妻みたいな……

「なに一人で言ってるのかしら私……」

 そう一人で呟きながらソファーにもたれかかる。

 みらいが大学行っている間とか、そう別にこの家で一人で過ごすことも今までで何回かはあった。でもさすがに一日一人で過ごすということは今まで無く、しかも帰ったらみらいとモフルン(たまにはーちゃんもいたり)が出迎えてくれるという期待もあったことから、私自身なにしてるのかしら……と、そんな気分になっていた。

 ちなみに昨日はほとんどなにもしていない。帰って晩御飯を食べ、疲れからそのまま寝ていた。

「そういえば帰るといつもみらいに振り回されているものね……」

 思い出すのは帰宅した後の日常。

 帰宅した夜は、互いの近況を報告したり、会えなかった時間分を取り戻すように……その、恋人の時間を過ごしていたり、翌日はみんなで一緒に出掛けていたり。

 みらいが大学に行く日だったりする時は終わる頃を見計らって、迎えに行ってその帰りに一緒に買物とかしたりして、常に退屈はしない日々だった。それにまだ私がナシマホウ界で生活していた頃も、常にみらいと一緒で一人で過ごす一日なんてほとんどなかった。

 なんとなく携帯を開き、みらいとのトーク画面を見る。画面内には昨日送られていた画像の次に通話履歴。

 未読から既読に変わったことを確認したのだろう、みらいから電話がかかってきたのだ。

 帰ってきたなんて思いもしなかったのか、みらいはひたすら謝り続け、そして今日の夜帰ってくるからと、伝えて少しだけの会話もして通話は終わった。

 今日の夜。つまりそれまでは完全に一人。みらいはいなくてもいつも一緒にいたモフルンも今回は一緒にみらいとフランスに行っている。はーちゃんは本当にいつ帰ってくるか分からないし、何度も言うけど一人だ。

 とりあえずこれからどうしようか。そう少しばかり考え、そして私は考えに行き着いた。

「たまには私が出迎えるのもいいわよね」

 いつもは私が出迎えてもらう立場。ならば今日ぐらいこの後帰ってくるみんなの為に出迎えるのもいいだろう。

 それに帰ってくるのは夜なわけだし、たまには一人で見て回るのも良いものだと思う。

 そう後ろ向きな思考から前向きな思考へ切り替えた私は、すぐに立ち上がって、今日の行動プランを考えていく――

 あ、その前に食器は洗って片付けないとね。