(゚∀゚) . 。o O(今日はそうめんについて書く

ジャンルは特に決めずに自由気ままにやっていく

王子とツバメの流星群 - 最後の王子のわがまま その2

【4】

そして季節は過ぎていき。

 

私と六花は高校生になった。

 

私はまだ気づいてない。

これからの未来にどんなことが訪れるのか。

 

今ある日常は永遠に続かないことを。

ずっと目を逸らしながら…それは着々と近づいていく

 

 

 

 「六花!早くー!」

「待ってよマナー」

 

いつもの公園に私と六花は行った。

それは毎日の当たり前の行事かの如く。

初めて六花と会ったときからこのときまで私と六花はお互いの顔を見ない日なんてなかった。

 

それはこれからだって

 

「今日はなにしよっか?」

「昨日は私がやりたいことをやったんだからマナがしたいことしよ!」

「う~ん…あっ!あの木登ってみようよ!」

「木?…え…高いよマナ」

 

私はアウトドア系、六花はインドア系だと思う。

対照的な私達だけどそれでも一緒にいる。

対照的だけど嫌なんて気持ちは一切なかった。

六花に合わせた遊びをすると六花は色んな知識を持ってるから色んなことを教えてくれる。

私がすごい!って驚いて、六花物知りだね!って言うといつも六花は赤くなってって可愛い。

でもすごく嬉しそうな顔をしてくれる。

私が考えた遊びだと最初六花は嫌だって拒否するけど最終的にはすごく楽しそうな表情になってくれて嬉しい。

 

「ほら六花!怖くないよ。目開けて」

「うぅ…ぁ…わあぁ!すごい!」

「登ってよかったでしょ六花?」

「うん!ありがとうマナ!」

 

六花が嬉しいそうな表情をすると私も嬉しくなる。

だから私は六花に喜んでもらえるようたくさん頑張る。

六花が喜んでくれるなら私はなんでも出来る気がするから。

 

そうして私と六花はいつも一緒だった。

ずっと、ずっと…

 

 

 

ビーっ

 

「んっ…」

 

目が覚めるとバスの中にいた。

いつの間にか寝てたみたい…

 

さっきの音はバスのドアが閉まった音みたいだ。

今はまだ夏には早く、春としては遅い、そんな季節。

バスの中も暑いような暑くないような…そんな感じだ。

 

高校生になって通学もバス通学に変わった。

今は学校の帰りで外も段々と暗くなっていく。

バス内も学校帰りの学生ばっか。

とくに珍しい光景ではなく見慣れた光景だった。

 

(さっきの夢…懐かしいな)

 

幼いころの私と六花が遊んでる夢。

あの頃はいつも新鮮な感じがした。

毎日が新しい発見をして、毎日が楽しかった。

新しいことは毎日のようにあったけど、それでも隣には六花っていう変わらない存在がいて…

 

それから小学生に上がるとありすと出会って二人から三人で行動するようになって。

中学生のときには夢みたいな出来事ばっかだった。

憧れのまこぴーと出会うことができ、直後にプリキュアになってジコチューと戦って。

その中でレジーナや亜久里ちゃん、お兄さんや色んな人と出会い、色んなことを学べた。

 

そんなときでも隣にはいつも六花がいた。

ずっと私の隣は変わらなかった。

 

ふと私は隣の席を見た。

隣の席には誰も座っていなく、空席のままだった。

なにも…なかった。

 

そう

 

ずっと当たり前のようにいてくれた六花は今隣にはいなかった。

 

【5】

六花と同じ高校に行けることが出来た。

 

六花と同じ高校に行くことを決めた私は頑張った。

頭は悪くないと思うけどそれでも六花の志望校は私ではレベルが高すぎる。

だから私は六花に教えてもらいながら毎日のように勉強を頑張った。

頑張った結果六花と同じ高校に行け、合格したと分かった瞬間嬉しくては涙が出そうだった。

どうしてかは分からなかったけど、それでもただ嬉しくて。

六花も凄く喜んでて自分が合格したことよりも私の合格の方が嬉しそうだった。

 

そうして新しい学校生活が始まった。

 

クラスは六花と違ってたけどそれでも朝一緒に登校したりお昼も一緒に食べることだってあった。

帰りだって一緒に帰ることも多かった。

中学生みたいに常に一緒ではなかったけどそれでも毎日六花と一緒にいるのは変わらなかった。

寂しくないっていうのは嘘になるけど、それでも六花は隣にいてくれるから。

 

そんな高校生活も時間は過ぎていき、二年生へ進級した。

 

二年生は文系理系によって分かれることになり、私と六花は互いに違っていた。

お互いの夢が違うんだから当たり前かもしれない。

そして時間割も大きくずれていったことで一緒と時間がさらに減ってしまった。

 

朝は…さすがに一緒だ。

それでも一緒に登校する機会も少しずつ減っていった。

お昼は一緒に食べることはなくなっていき、帰りもお互いの時間割が大きく違うことから一緒に帰ることはなくなった。

学校内で六花と話す機会もそんなになく、あっても歩いてる途中に見つけたから軽く話すぐらい。

 

そうして一日で六花と一緒に機会は一回もないという日だって出てきた。

 

(ずっと…一緒だったのにな。寂しい…な)

 

いつの頃からか私は少し臆病になっていた。

自分から六花に連絡することが少なくなっていった。

なにか…連絡して私の知らない六花が出てくるのでは…そう思ってしまっている。

そんなすぐ変わるわけないのに。

でも出来なかった。

六花の家に行くことも少なくなった。

 

(なんで…こうなったんだろうな)

 

ブブッ

 

携帯から振動がした。

高校入学祝いとして携帯を買ってもらった。

それは六花も同じで、最初の頃はずっと六花と連絡を取り合ってたけど最近はそこまでしていない。

 

(誰からかな?)

 

画面を見ると…

 

(え?六花?)

 

私からメッセージを送るのはよくある。

それは今でも同じで、六花からメッセージが来るっていうのはほんとに稀だ。

 

『今日って時間ある?相談があるんだけど』

 

相談?なんだろう?

六花が相談なんて珍しいな…

 

(いいよ。晩御飯食べたら六花の家に行くね…っと)

 

少し経つと分かったってメッセージがきた。

 

私は久しぶりに六花に会える喜びと私の知らない六花に会うのが怖いというという気持ちを抱えながら夜まで待った。

 

【6】

「………」

 

晩御飯を食べ、六花の家の前に辿り着いた。

別にいつもみたいに六花の部屋に向かって猫声で鳴くだけなのに…なんでか出来なかった。

ならインターホン押せばいいだけの話だ。

でも…押したらなにか変わっちゃう。

そんな気がして…

 

そうして私が六花の家の前で立っていると

 

ガチャッ

 

「マナ?」

「あ、六花…」

 

扉が開き、六花が出てきた。

 

「なにしてるのよそこで?」

「えっと…」

「まあいいわ。入ったら?」

「…うん」

 

そうして私は六花の家にお邪魔した。

 

 

 

「六花の部屋久しぶり~」

「そうかもね」

 

ここ最近は会うこと事態が少なくなっていったから六花の部屋に限っては本当に久しぶりな気がする。

久しぶりな六花の部屋は…なにも変わってなかった。

いつも通りの六花の部屋で、相変わらずカエルグッズがあったり、色んな本がたくさんある。

私の知らない本もあるけどまあそれは仕方ないとして。

 

(なんで心配してたんだろ…こんな短い時間で変わるわけないのに)

 

私は内心すごく安心していた。

 

「最近はマナと会うのもあまりなかったしね。学校はどう?って同じ学校なのにね…」

「あはは…二年生はやっぱり忙しくなるね。勉強も大変だよ」

「ちゃんとついていけてる?私じゃもう教えることも難しくなってくるんだから」

「ちゃんと出来てるよ。六花私の保護者みたい…」

 

まあ今まで六花に教えてもらってたけど最近はきちんと一人で頑張ってる。

文系理系の違いから専用の分野に入るとさすがの六花でも分からないもんね。

 

やり取りが懐かしい。

なんか六花といる時間がとても貴重な時間だって認識できた。

 

(私ってやっぱり六花がいてくれないとなにも出来ないのかも…)

 

想像以上に私は六花に依存していたのかもしれない。

六花との時間がなくなってほしくないってすごく思ってしまったから。

六花といるこの今がなくなってほしくないって…

今まで一緒だった期間を考えたら今一緒にいられない時間なんてほんのちっぽけなのに…

いや、ずっと一緒だったから…なんだよねきっと。

 

「それで相談ってなに?」

「あ…うん。そうね」

 

色々思うのはいいけどとりあえず今日の本題は六花が相談があるということだ。

 

「六花が相談があるって珍しいよね。どうかしたの?」

「うん…」

「六花?」

 

六花はなにか言い辛そうで。

そんなに重大な相談事なの?

それとも私には言い辛いとか?

 

「マナ。私ね…」

「うん」

 

六花が口を開いた。

 

「私ね、告白されたの」

「…え?」

 

そして六花の口から出た言葉は

 

「一年のときから同じクラスだった人にね、付き合ってくださいって」

 

一瞬信じられなく

なにが起きたのかも分からなかった

 

「………」

「…マナ?」

「あっ、ごめん。その…なんか予想外の相談で少しね」

 

予想外は当たっていた。

でも少し所じゃない。

今の私はすごく動揺していた。

それは今までの寂しい気持ち以上にすごく…辛い。

 

「えっと同じクラスだったってことは…六花もよく知ってるんだよね」

「うん。一応男子の中だとよく話すかな」

「そう…なんだ」

 

よく…話すんだ…

私の知らない六花がこんなすぐ分かるなんて…

クラスが違うんだから当たり前なのかもしれないけど…それでも…

 

「今日ね、彼に放課後話があるって言われてね、そのときに…付き合ってくださいって」

「………」

「返事はいますぐじゃなくてもいいって、ちゃんと考えて欲しいって言って…」

 

痛い。

胸が…痛い。

ズキッとしていてチクチクする。

なんで…こんなに痛いのかな?

 

「六花は…その人のことどう思ってるの?」

「嫌いではないかな。話も合うし一緒にいるのも多いし好きだとは思う」

 

好き…

その言葉を聞いた瞬間胸の痛みが凄く広がって…辛いよ。

 

「六花はどうしたいの?」

「…分からない。好きだとは言ったけど恋なのか分からないし…」

「一つ…聞いてもいい?」

「なに?」

「どうして私に相談したの?」

 

六花はなんで私に相談したんだろう?

私にアドバイスが欲しいとか?

私も付き合ってる人もいないし今までに恋人なんていなかった。

 

そう思ってると。

私は二階堂君に告白されたあのときのことを思い出した。

なんだか二階堂君のときと似ている感じがして。

 

(確かあのとき私も六花に相談してたっけ…)

 

二階堂君の名前は出さなかった。

というより告白されたことは言わないでどうすればいいのかって聞いたんだっけ…

でも今回六花が告白されたことを言った。

ただ…それだけの違いなのに…こんなにも辛い。

 

(あのとき、もし私が二階堂君に告白されたって言ったら、もしかして六花も今の私みたいに辛かったのかな…)

 

なんでこんなに辛いのか分からないけど…きっと六花だって…

 

「なんでかな。でも…マナに聞いたらもしかしたら答えが分かるのかなって」

「答え…」

 

あのときの私も答えを求めて六花に。

もし…六花も答えが欲しいなら…私は六花に応えないと。

 

でも

 

どうしてか、言いたくなかった。

言ったら…余計にこの痛みが増えるんじゃ…そう思ってしまった。

 

それでも…私は…六花に

 

「六花が…告白されたときにどう思ったのか。その、それを素直に出せばいいんじゃないかな?」

「………」

 

なんとか言葉を出した私。

あのときの六花の言葉とほとんど同じだけど。

でも…きっとそう思ったから。

私が六花に言うべき言葉はきっとこれだと思うから。

 

「うん。ありがとマナ」

「あまり参考にならなかったかもしれないけど…」

「そんなことないよ。今のマナの言葉で私決めたから」

 

決めた…んだ。

その人のことを好きだと言ってた。

恋かどうかは分からないって言ってたけど…もしかしたら…

 

どんな人なのか、顔も分からないけど…もし六花と付き合うことになったら…私は…

なんでこんな気持ちになるのか分からない。

でも考えると考えるほど辛くなっていった…

 

【7】

「………」

 

六花の相談から数日が経った。

あれから少し六花とお話してそのまま帰った。

ほんの少しの距離なのに六花の家を出てそのまま自宅に帰ってる間のことがなにも思い出せない。

六花とのお話だって少し上の空になってて…

 

原因は分かってる。

 

――私ね、告白されたの

――一年のときから同じクラスだった人にね、付き合ってくださいって

 

(なんで…私こんなにも…)

 

胸が痛くて…辛くて。

もし…六花がその人と付き合うことになったら私は…

ほんとなら…六花を応援するべきなのかもしれないのに…なのに嫌だって思う自分がいて。

 

(一体…なんなんだろうこの気持ち)

 

「マナ!」

「はいっ!?」

 

急に叫び声が聞こえてびっくりした私。

…って

 

「なんで急に耳元で叫ぶのさ!?」

「さっきから呼んでるんだけど…」

「え?ほんと?」

「ほんとほんと」

 

同じクラスでよく話す友達が急に叫ぶからびっくりしたけど…

ずっと呼んでたの?

 

(どれだけ悩んでたんだろう私)

 

そういえばこうやって私が悩んでるときに六花が話しかけて私が気づかないで最終的に六花が叫んだこともあったっけな…

 

「まあいいや。それでどうかしたの?」

「どうかしたのはマナでしょ」

「へ?」

「最近ボーっとしてるしこうやって話しかけても聞こえてないみたいだし」

「そう…かな?」

 

確かにここ数日はあの件ばっかり考えていて…

 

「ちょっと悩んででさ」

「悩む?マナが!?」

「え?なにその反応?」

「だってマナが悩むなんて一年のときから見たことないし。というか悩むなんてマナらしくない!」

 

さすがにここまで言われるとちょっと…

でも確かに私が悩むって私らしくないのかな?

 

「まあいくらマナでも悩むときは悩むよね。それで?」

「え?」

「いやだからなんで悩んでるのってこと」

 

一年のときから同じクラスで性格もよく分かってるけど結構積極的で。

でも人のことはよく見てるし、ちょっと世話焼きな面もあるからか私の悩みの相談を受けようとしているらしい。

…聞いてみてもいいかな?

 

「えっとさ…じゃあちょっと聞いてもいいかな?」

「私に任せなさい!」

「そのね、いつも一緒だと思ってた存在が急に離れるとどう思うかな?」

「それって菱川さん?」

「な、なんでそこで六花の名前が!?」

「だってマナといつも一緒だった人って菱川さんぐらいしか。マナってことある毎に菱川さんの話題出るしさ」

 

まあ事実なんですけど。

それでもなんかズバッと言われるとちょっと…

 

「まあそれは置いといて、そうね…やっぱり寂しいんじゃないかな。自分の半身が離れるみたいな?」

「半身が離れる…あとさ」

「ん?」

「なんでも分かってたはずなのにその人が私の知らないその人になってたら…なんて言えばいいんだろ?」

「私に聞かれても…つまり菱川さんのことならなんでも知ってるマナだけど、マナの知らない菱川さんがいたってこと?」

「だからなんで六花…」

 

相談に乗ってくれると同時に面白がって言ってるよね絶対…

 

「まあまあ」

「はぁ…まあそんな感じなのかな?」

「うーん…そりゃ確かになんあ嫌な感じはするけど…でも」

「でも?」

「マナだってマナしか知らないことってない?菱川さんは知らないようなこと」

「あっ」

 

確かにそうだ。

ずっと六花が私の知らない六花に悩んでたけど六花の方だって六花は知らないことがたくさんある。

今こうして話していることも、あのとき…二階堂君に告白されたことも。

 

「まあ確かに自分の知らないことがあったってのはショックかもね。で?」

「どうかしたの?」

「本題よ本題。悩んでるのはこれだけじゃないでしょ?」

「っ!?」

 

そこまで分かっちゃうんだ。

私がそんなに分かりやすいのか、勘が鋭いのか、どちらにせよこれは言わないとダメな感じだ。

 

「えっとね、そも…ある人がある相談事をしてきてさ」

「ふむふむ」

「その一件以降なにか胸がチクってする感じで痛くて」

「痛みってどんなとき?」

「その人のこと考えてるときかな…」

 

さっきまでの面白がってる様子から真剣に考えてくれてる。

多分六花のことってバレてるだろうけどここまできたらもう六花の名前は出さない。

 

「ねえマナ。その人の相談事ってもしかして別の人がその人になにか言ったとか?」

「…うん」

「例えば…告白とか」

「っ!?」

 

さすがに驚いた。

今の会話でここまで的中するとは思わなかったもん。

 

「なるほどね…」

「も、もしかして分かったの!?今の会話だけで!?」

「まあ多分ね。でもな…」

 

なんか言い辛そうというか言っていいのかみたいな表情に変わっていった。

え?分かったんだよね?なんでそんな表情を?

 

「えっと…分かったなら教えてほしいんだけど…もしかしてなにかの病気とか?」

「え?…まあ病気っちゃあ病気なのかな…なんの漫画みたいな会話だろこれ」

「?」

 

漫画?

なんで漫画がここで出てくるのか分からない。

でももしかしたら漫画がヒント?

 

「マナ」

「は、はい!」

 

急に真剣な顔になってつい返事しちゃった。

 

「多分これ私から言うべきじゃないんだと思う」

「え?なんで?」

「ちゃんと自分で気づかないと意味がないからかな?…それに」

「それに?」

「気づいたとしてももしかしたら…ごめんなんでもない」

 

気づいたら…なにかがあるってこと?

一体なんなの?

 

「マナ一つだけ言わせて」

「う、うん」

「気づいたとしても決して諦めたりしないで」

「諦めるって…なにを?」

「それは気づいてからじゃないと。しっかりと考えて答えを出すこと!」

 

そうして相談は終了した。

結局なにが原因なのかいまいち分からないけど、それでも分かったときちゃんと考えよう。

それがアドバイスなんなら。

 

【8】

いつもの帰り道。

徐々に当たり前となりつつあった私一人の帰り道だけど、いつもの寂しさは今はなかった。

 

(諦めたりしないでしっかりと考えて答えを出す…かぁ)

 

結局なんなのか分かんないし余計考えることが増えたかもしれない。

 

そんな考えの中歩いてると

 

「マナ!」

 

聞き慣れた声がして振り向くと

 

「レジーナ!」

「マナ久しぶり!」

 

大貝第一中学校の制服を身にまとったレジーナがいた。

私が高校へ進学した後は中々会う機会もないしここ最近は平和でプリキュアの仕事もないから本当に久しぶりに会った。

 

「レジーナ元気だった?…って」

「マナ?」

「もしかしてレジーナずっと私のこと呼んでた?」

 

ここ最近考え事して私の名前を呼んでるのに気づいていないらしいからもしかしてレジーナもずっと呼んでたんじゃ…

 

「ううん。今マナを見つけたから呼んだのよ?」

「そっか。よかった…」

「?」

 

ジーナはポカーンとした顔で私を見てる。

まあ事情を知らないレジーナなら当たり前か。

 

「レジーナも今帰り?」

「うん。本屋寄ってってこれ買ってきたの!」

 

ジーナが取り出した本は受験勉強用の参考書で。

そっか、レジーナももう受験生だもんね。

 

「レジーナはもう高校どこ行くか決めたの?」

「マナとあと六花と同じ高校!…って言いたいけどレベル高いし…」

「ちゃんと勉強すればレジーナも行けるよ!」

「勉強やだー勉強嫌い―」

「でもレジーナ成績悪くなかったよね?」

「それはマナと六花が教えてくれてたし、二人が卒業してからは成績も少し悪くなってるもん」

 

ジーナが大貝第一中学校に入った直後は勉強もほぼ1から教えなきゃ行けなかったからみんなで勉強を教えていた。

そして覚えてきたら私と六花でよくレジーナの勉強を見ていた。

 

「でもレジーナ教えたことはすぐ覚えるし頑張れば」

「六花って下手な先生とかよりも教えるの上手いもん。あれを覚えたら普段の授業じゃ覚えられないよ」

「まあ…確かに」

 

六花は教えるのがとても上手かった。

ジーナと一緒に私もなるほどって思わず言ってしまったときもちらほらと。

その際は「なんでマナもうなずくのよ…」って怒るよりも呆れられてたけどね。

 

「ねえマナ?どんな感じの問題出るか教えて?」

「ダメだよレジーナ?ちゃんと自分で頑張らないと。というか試験問題って毎年同じか限らないし」

「ぶーマナの意地悪ー」

 

ちゃんとみんな対等な立場で受けないとダメだもんね。

 

「そういえば今日は六花と一緒じゃないの?」

「えっと…ここ最近は私も六花もお互いに忙しくて一緒には帰れてないんだ…」

「ふーん…そうなんだ。珍しいな」

「なんで?」

「だって二人っていつも一緒じゃない。私がマナを連れだそうとしても大抵六花いるし」

「…そうだったっけ?」

「マナが六花も一緒に行こって誘うんじゃん」

「あれ?」

 

そうだったっけな?

でもそう言われたら…確かに。

ジーナが遊びに行こって言うと私は側にいる六花も誘ってた気がする。

あまり自分ではそう思ってはなかったんだけど…無意識に?

 

「じゃあ今はチャンスかな」

「チャンス?」

「マナと二人きりでいられるチャンス!」

 

そう言いレジーナは私の腕に抱きついてきた。

ジーナは相変わらず積極的みたい。

 

「高校ってどうなの?楽しい?」

「中学とは違う楽しさがあるかな。これ前にも話さなかった?」

「そうだっけ?でも来年は高校生になるんだから気になるよ」

「じゃあ後悔しないようにたくさん勉強しないとね」

「うー…頑張ってみる…」

 

ジーナはしぶしぶって感じだけどなんだかんだでレジーナはちゃんとやるしきっと大丈夫。

もしかしたら本当に来年レジーナは後輩として来るかもしれない。

そうなったら嬉しいな。

 

「ねえマナ?」

「ん?なにレジーナ」

「最近なにかあった?」

「え?」

「どことなくマナ元気ない」

 

まさかレジーナにも言われるとは…

そんなに表情出やすいのかな。

 

「まあちょっと…」

「…六花?」

「え?」

「あ、当たりだ。六花の名前出したら表情変わった」

 

なんでレジーナもすぐ分かるんだろう…

そんなに私六花のことばっかり考えてるのかな。

 

「…ちょっと六花とね」

「喧嘩でもしたの?」

「違うよ。六花から相談受けてそれでちょっと悩んじゃって」

「ふーん。どんな相談なの?」

「それは…」

 

ジーナに言っていいのか分からなかったけどレジーナと会ったことで少し気が緩んでしまったのかな。

私はあの日のことをレジーナに話していた…

 

「…ってことがあってね。それ以降なんか胸が痛くて…」

「………」

「レジーナ?」

「マナってみんなに愛振りまく割には自分の愛って分かんないよね」

「へ?」

 

ジーナの言葉もポカーンとした私。

自分の愛?なんのこと?

というか

 

「レジーナもしかして原因分かったの?」

「簡単じゃないそれ」

「私全然分かんないよ…」

 

なんでみんな簡単に分かるんだろう。

自分のことなのに全然分からない私って…

 

「あまり言いたくないな…もしくはいっそこのまま」

「レジーナ?」

「………やっぱりダメね…ねえマナ?」

「なに?」

「マナは私のことどう思ってる?」

「そりゃ大好きだよ?」

 

大好きに決まってるよ。

急になんでこんな質問をするのかが分からない。

 

「じゃあ…ありすや真琴は?」

「大好きだよ。ねえレジーナ?なんでこんなこと聞くの?」

「じゃあ六花は?」

「六花?」

「六花のこと愛してる?」

「愛してるよ?」

「ほら答え出た」

「え?」

 

え?今ので答え出たの?

全然分からない以前にレジーナの質問の意図もまったく…

一体今のなにが?

 

「ねえレジーナ?まったく分からないんだけど…どういうこと?」

「だからマナは六花のことを愛してるってこと」

「六花を…愛してる?え?でもさっきレジーナが愛してるって言ったから…」

「そうね…マナ?私のこと愛してる?」

「え?急に言われても」

「ほら」

「?」

「マナ無意識だろうけど愛してるって言葉六花にしか使わないもん」

「そう…なの?」

 

ジーナに言われて初めて気づいた。

確かに私はみんなに対して愛を振りまいてそして好きって言葉をよく使うと思う。

でも…愛してるって言葉…六花にしか使ったことない。

六花しか。

六花を…愛してる。

そっか…私…

 

「私六花のことが…好きだったんだ」

「やっと気づいたのね…というか」

「?」

「マナが六花の高校行くことにしたのって六花と一緒にいたいからって思ってたんだけどな」

「ぁ」

 

――私六花と一緒の高校に行く。直感で決めたよ!

 

あのとき。

直感で六花と同じ高校に行くことを決めたけど。

ただ…六花と一緒にいたいから…離れたくなかったから同じ高校に行きたかったんだ…

 

そして六花への想いに気づいた瞬間色々なピースがはまった。

 

「そっか…純粋に嫌だったんだ私。六花が他の誰かと付き合うんじゃないかって。それに…」

「寂しかった?」

「うん。ここ最近六花といられる時間が少なくなっていってて…ただ純粋に寂しかったんだ。六花と離れるのが…嫌で、怖かった」

「………」

「あはは…なんか単純なことだったんだね…」

「それで?」

「え?」

「マナはどうするの?」

「っ…」

 

六花への気持ちは気づいた。

じゃあどうするのか。

六花に…告白する…べきなのかな。

 

「私は…」

「マナ」

「…なに?」

「ちゃんと後悔しないでね」

「………」

「私マナのこと大好きよ。六花だって…大好きだから。二人がちゃんと答えを出して…そして」

「うん。ありがとねレジーナ」

 

そしてレジーナと別れた。

 

後悔か…

諦めたりしないでとか後悔とかみんなちゃんと分かってるんだな。

 

ずっと…私六花に依存してたんだ。

六花と高校が違い離れ離れになるという事実を無意識に拒否して六花と一緒にいようとしてたんだ。

 

そのとき

 

ブブッ

 

携帯から振動がして画面を見ると。

 

『明日はいつもの丘でいい?』

 

六花からのメッセージだった。

そっか。

明日はいつもの流星群の日だったな。

 

『うん。いつもの時間で!』

 

六花から返事も返ってきて私は携帯を閉まった。

流星群…ちゃんと六花覚えてたんだ。

もし…もし六花が既に返事を出してたとしても。

後悔したくない。だから…

 

【9】

翌日

いつもの丘で六花を待っていた。

昨日のレジーナとの一件で六花への気持ちに気づいたけどまだ決意は固まっていない。

告白するべきか否か。

 

(告白しても結ばれるわけじゃない。むしろ…)

 

私も六花も女の子だ。

同性同士という事実がもし告白して最悪の結果になったらって思うと…

でも…そうやって諦めたり後悔したくない…だったら。

 

そうして告白しようと決心して色々考えてるうちに

 

「マナ!」

「あ、六花!」

「ごめん!遅れちゃった」

「大丈夫だよ。まだ明るいんだし」

 

そして私と六花は座った。

いつもの定位置で、毎年のように時間が来るのを待って。

私はチラッと六花の顔を見た。

六花は私の表情に気づいてないみたいで。

 

(綺麗だな…)

 

六花が好きって分かってからはなんかもう…余計六花が綺麗に見える。

昔は可愛かったけど今は可愛いというよりは綺麗な印象だ。

そんな六花を見てると告白した人も六花を好きになった気持ちが分かる。

綺麗でやさしくて面倒見も良くて、付き合うなら理想の女の子…いやもう女性と呼ぶべきかな。それが六花だ。

 

そうやって心の中で六花を絶賛していると

 

「ねえマナ」

「は、はい!?」

「…どうしたの?」

「ううん、なんでも。どうかした?」

「この前のさ、相談のやつだけど…答え出したわ」

「っ!」

「さっき返事を出してきた」

 

答え…出たんだ。

でもどんな結果になっても私は…六花に。

 

「断った」

「え?」

「ごめんなさいって言っちゃった」

 

六花は…受け入れなかった。

仲が良かったっていう人の告白を。

 

「…なんで?嫌いではないんだよね?」

「うん。でもね、やっぱり恋ではないし…それに」

「それに?」

 

六花は私の顔を見て

 

「マナの面倒見ないといけないからかな」

「…え?」

「いつも無茶をする幸せの王子を支えるツバメとして頑張らないといけないし…ね」

「………」

「マナ?」

 

なんで…

嬉しいはずなのに。

なんで…

こんなにも私は

 

(そっか…)

 

気づいた。

気づいてしまった。

 

(私はただ…六花に幸せになってもらいたいんだ)

 

他の誰でもない六花に。

世界中の誰よりも六花に幸せになってほしい。

 

そして

 

(ツバメは…離れないとだめなんだ)

 

幸せの王子の元にツバメがずっといたらいずれ…

だからツバメはいずれ旅立とうとする。

このまま幸せの王子が…ツバメを拘束したら…ツバメは幸せにはなれない。

 

(私は…六花だけの王子にはなれないんだ…)

 

私はきっとこれからも幸せの王子としてみんなに愛を振りまいていく。

それは同時にツバメを幸せにすることが出来なくなる。

きっと…どんなに時間が経っても。

だってそれが私だから。

 

(私は六花が望む幸せの王子として、私が望む幸せの王子として)

 

みんなを…六花を幸せにしたい。

だから

 

「ねえ六花」

「なにマナ?」

 

私は…

 

「………」

「?どうしたのよマナ」

 

私はこの気持ちを…

 

「ねえ六花、私ね…」

「うん」

 

六花に…

 

「私六花が…六花と」

 

この気持ちを

好きっていう感情を

六花に…

 

 

 

 

 

「六花!」

「マナ?もしかして待ってたの?」

「ちょっと前に終わったからさ、六花と一緒に帰ろうと思って」

「そっか…ちょっと待ってて。すぐ準備するから!」

 

私は告白をしなかった。

みんなに愛を振りまく私では…幸せの王子ではきっとツバメを幸せに出来ないから。

 

そして私はこの運命を受け入れた。

ツバメが王子の元から飛び立つ運命を。

六花と…離れ離れになる…そんな運命を。

 

でも

 

それでも少しだけでも…そんな運命を否定したいから。

だから今私は六花と積極的に一緒にいようと決めた。

いつか離れ離れになってしまうそんなときまで一緒にいようって。

 

きっとそんな一緒にいる時間はもう残り少ない。

多分高校を卒業までが残りの時間なんだと思う。

卒業したら…きっと一緒にはいられない。

そんな確信がある。

 

「六花!この後時間ある?ちょっとお願いがありまして…」

「この前の学科共通の宿題のあれ?」

「お願いします!」

「仕方ないわね…桃まんで手をうつわ」

「ありがと六花様!愛してるよ~♪」

 

私はきっとこれからもずっと幸せの王子として生きていく。

みんなに愛を振りまく存在としてこれからも。

 

でも

 

(今は…今だけは六花といたい。六花の側に…いたい)

 

これが最後の六花へのわがまま。

卒業してツバメが飛び立つその前に私は最後のわがままをツバメさんに頼んだ。

今だけは…今だけは幸せの王子じゃなくて…相田マナとして六花の側に。

 

多分ただ逃げてるだけなのかもしれない。

諦めただけって言われるかもしれない。

でもこれは私の本心だから。

嘘偽りのない私の本心。

六花の幸せを願った私の選択がこれだから。

 

だから

 

(お願いします。運命がやってくるその瞬間まで…一緒に…ツバメさんの、六花の側にいさせてください)

 

そのときがやってきたら私は幸せの王子になります。

そしてツバメさんを、みんなを幸せにするために。

  

 

本作品の修正版

www.pixiv.net